大学にとって18歳人口の減少は「どのくらい」危険なのか
大学業界は斜陽産業(需要が傾向的に減少する・している産業)である、と言われています。
そう言われる主な原因は「少子高齢化」、なかでも「18歳人口の減少」です。
大学のメインターゲットである18歳人口は今後どんどん減少するため、教育の対象がいなくなることで大学は存在価値を失う、という話です。
ここまでは大学で働いている教職員はよく耳にする話ですし、大学関係者でなくてもご存じの方も多くいらっしゃると思います。
では、18歳人口の減少は大学にとって、具体的にどのくらい危険なのでしょうか。
以下の文部科学省のデータを使って少し掘り下げてみたいと思います。
2040年を見据えた高等教育の課題と方向性について(文部科学省)
文部科学省のデータを参照すると、2020年の18歳人口は117万人です。一方、20年後の2040年には18歳人口は88万人になっている見込みです。
20年間でなんと29万人の減少です。
この数字だけでも危険な気がしますが、さらに踏み込んで考えてみたいと思います。
2020年の「大学進学率」は53%で、117万人の18歳人口のうち、大学に進学するのは62万人です。
仮に、2040年になっても大学進学率が53%から変わっていなかった場合、大学に進学するのは88万人の18歳人口のうち53%、つまり47万人になり、2020年からの20年間で大学進学者数は15万人減ることになります。
20年間で大学進学者数が15万人減るということは、「定員1,000人規模の大学が150校潰れる」ことになります。
ここまで掘り下げると本当に危険なことがわかります。
大学にとって18歳人口の減少がどのくらい危険か、と問われると「向こう20年で定員1,000人規模の大学が150校潰れるくらい」という答えになります。
もちろん、上の例はあくまで単純計算で、大学進学率は60%程度まで上がることも予測されていますし、18歳人口が減少しても社会人教育に力を入れたり留学生を積極的に受け入れたりすることで、ある程度の入学者数を確保することはできます。
ただ、多くの大学にとって社会人や留学生の入学者数はまだまだ少数派で、これらを18歳人口を上回る規模で受け入れる大学は今後もそう多くないと思います。
つまりこの問題は多くの大学が近い将来直面する危機で、教職員はこの危機の中で自大学を生き残らせるための策を講じていかなければなりません。
そのためには教職員が危機を危機だと認識することがまず必要です。
その際、ただ単に「少子化やばいです」というより、「20年で大学進学者数が15万人減る」という数字や「定員1,000人規模の大学が150校潰れる」という具体的な変化を知る・考えることが認識の手助けになると思います。
余談ですが、20年後の2040年にはAIをはじめとする技術の進化により、ルーティンワークや事務作業の多くが自動化・代替化されていることが予測されます。
大学職員の仕事のほぼ全てがAIに取って代わられる、という主張を目にすることもあります。
大学職員は今後、「少子高齢化」「技術革新」のダブルパンチを食らうこととなり、自大学を生き残らせるだけでなく、自身が生き残るためにはどうすればよいか、も考える必要がありそうです。
最後に。このブログは所属大学が違えばキャリアも異なる複数の大学職員によって運営されています。
私は「①地方公務員」→「②私立大学職員(総合職)」→「③また違う私立大学職員(専門職)」というキャリアを歩んでおり、今は数字やデータを用いて自大学の教育成果や高等教育業界の状況をみえる化して打ち手を考えたり提案したりする仕事をしています。
よって、私がブログを書く際は今回のようにデータを用いた記事をアップしていきたいと思っていますので、ご興味をお持ちいただけた方はまた見に来ていただけると嬉しいです。
【見えないモノを見ようとしがちな大学職員】