大学職員の生活改善ねた

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変革を起こす組織が持つ要素②:ブレイントラスト

管理人Oです。

実は私、今年に入って大行政管理学会に入会したため、先日の定期総会・研究集会には初めて参加しました。それだけでなく、大学行政管理(university administration management)に関する学会参加自体が人生初でした。
総会・研究集会では、得た気づき・学びが多かったことはもちろんのこと、管理人Iさんの言葉を引用させていただいて、"大学職員として学び続ける必要"を再認識できるよい機会に恵まれました。(管理人Iさんの記事「大学職員として学び続ける必要性」はこちらから)

さて、人生初の学会参加に関する感想はここまでとし、前回の私の投稿で予告したとおり、今回の記事では、変革を起こす組織が持つ要素の2つ目として学んだ内容を紹介いたします。
前回の記事同様、大学業務そのものからは少し離れた内容ですので、予めご承知おきください。

個々の創造力を協働的に融合させるための仕掛け

本ブログを読んでいただいている皆様の年代にはバラツキがあるかと思いますが、日本では1996年に公開されたCGアニメーション映画「トイ・ストーリー」は誰もが耳にし、また、視聴された方も多いのではないでしょうか。
この「トイ・ストーリー」を世に生み出した会社Pixar Animation Studios(以後、「ピクサー」と呼びます)。
今回注目する要素は、ピクサーの共同創設者Ed Catmull氏が、今でも映画製作において大事にしている、チームを機能させるための仕掛けの一つです。

Ed Catmull氏によると、ピクサーでは、トイ・ストーリー制作時から有機的に組織された専門家集団があり、この集団がピクサーの名だたる映画を支える必要不可欠な要素となっているそうです。
その集団こそが、今回紹介する要素「ブレンイントラスト(braintrust)です。
Ed Catmull氏は、彼の著書Creativity, Inc.: Overcominig the Unseen Forces That Stand in the Way of True Inspirationにて、ブレイントラストとはどのようなものか次のように述べています。

ブレイントラストとは、卓越した作品づくりに向けて、妥協を一切排除するための仕組みだ。スタッフが忌憚なく話し合いをするための要となる制度で、およそ数カ月ごとに集まり、制作中の作品を評価する。その仕組みはいたってシンプルだ。賢く熱意あるスタッフを一堂に集め、問題の発見と解決という課題を与え、率直に話し合うよう促す。正直になることが義務のように感じられる人は、率直さを求められると多少気が楽になる。率直な意見を述べるかどうかを選ぶことができ、実際に発言すると、本音である場合が多い。ブレイントラストは、ピクサーで最も重要な伝統の一つだ。絶対確実な仕組みではない。ときには率直になることの難しさが際立つだけの場合もある。だが、うまくいったときの成果には驚くべきものがある。ブレイントラストは、制作現場のムードまで変えてしまうのだ。

引用元:ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法(邦訳:石原薫)

Ed Catmull氏曰く、ピクサー社内向けの試写会のために出来上がる最初の試作品は、すべて『目も当てられないほどの「駄作」』であり、それを面白くすることが、ブレイントラストの仕事だという。
ブレイントラストのメンバーは、ピクサー内の監督・脚本家・ストーリーの責任者など様々な立場のスタッフで構成され、また、よい作品を生み出すために、メンバーには『物語を語る才能』『率直さ』を求めているとのこと。

ピクサーでは、最初に脚本絵コンテを作成し、仮で音声・BGMをつけて編集し、リールと呼ばれる映画の完成イメージが作られるそうです。
ブレイントラストは、映画製作チームが試作したリールを観て、ストーリーに真実味が感じられない箇所、改善できる箇所、全く物語に効果のない箇所などについて議論をすることにより、映画の本筋で弱く感じる部分を指摘、改善策について提案・助言をする役割を担っています。

ここで特徴的なのが、ブレイントラストには、改善策を提案することはできても、試作品に手を加える権限はないということです。
ブレイントラスト会議で提案された内容を受けてどうするかは、映画に関わる監督に一任されており、映画製作チームはブレイントラストによる批評という同じ課程を繰り返し経ることにより、傑作と評価されるような作品を作り上げるのです。

大学におけるブレイントラスト

映画作品を作るという、一見すると大学の業務と全然関係のないこの話から、私は大学が常に質のよい環境を学生・教職員・地域に提供するための組織づくりのヒントを得ました。

大学は、学校教育法第五十二条に定められるとおり、"学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること"が明確に求められています。
大学職員は、時代やその時々の大学の状況に沿ってこの目的を達成するための環境を整えることに携わる重要な枠割を担っていると言えるでしょう。
配属部署によって直接・間接の違いはあるかもしれませんが、映画製作チームのように、携わる職務の中で大学の目的を達成するための取組みを行い、学生・教職員・地域住民など大学のステークホルダーにとって価値ある体験を提供することも考えなければなりません。
その中で、『高等教育の未来を語れる』『率直・誠実』な教職員を主とするブレイントラストを構成すれば、部署・分野横断的に忌憚なく各取組みにおける課題解決策を提案し、大学の目的達成のための道筋を示すことができるのではないかと思います。

今回は、前回の投稿に続き変革を起こす組織が持つ要素に注目して、記事を投稿いたしました。
今後も、組織づくりに関する情報収集や学習は継続していきますので、共有できる情報に巡り会いましたら、随時記事にしていきます。

【管理人O】

書籍

Amazon.co.jp | Creativity, Inc.: Overcoming the Unseen Forces That Stand in the Way of True Inspiration

Amazon.co.jp | ピクサー流 創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法