アンケートのメリット・特殊性・限界は何か(その③)
皆さんは仕事をするうえで意識している、もしくは大事にしている考え方はありますか?
そして、それをキーワードで説明すると何になりますか?
ちなみに私は「アウトカム」「学費」などです。
私は私立大学職員なので学生に超高い学費をお支払いいただき、それで生活をさせていただいています。
その超高い学費に見合う価値を提供しない教職員が存在を許されるわけがないと思っているので、学生にとって良い大学を作るためのアウトカムは出し続けたいと思っています。
学生全員が支払った学費の総額に対する価値を必ず得ることができる大学になるといいなあと思います。
と、まあそんな話は横にして、今回の記事は、以下の二つの記事の続きです。
daigakushokuin2020.hatenablog.com
daigakushokuin2020.hatenablog.com
前々回の記事(その①)では、アンケートには多くのメリットがあることをご紹介し、
前回の記事(その②)では、アンケートが特殊なコミュニケーションであることをご紹介しました。
今回はアンケートの「限界」について、前回・前々回同様、三つご紹介します。
①調査の「範囲」に限界がある。
調査者が知りたいことを明らかにするために事前に設定した質問項目以外に対する意見を知ることはできません。
「大学の満足度」を知りたいときに「授業は?」と「クラブは?」と「友人付き合いは?」と「進路は?」という質問項目を設定すると、「職員対応」の満足度は知ることができません。
②調査の「深さ」に限界がある。
回答者の意識上にある表面的な意見しか得ることができず、回答者自身も気づいていないようなインサイトは調査・測定することができません。そしてこのインサイトが結構大事だったりもします。
インサイトに踏み込むために深堀りして質問したいとこですが、それもなかなかできません。質問の仕方を工夫すればできなくはないですが、インタビューに比べて深堀りは困難です。
③回答者の「協力」に限界がある。
調査者が興味・関心を持っている調査テーマは、回答者が今まで考えたことも意識したこともないテーマであることが多いです。
このギャップの中で調査に協力してもらう以上、回答者に協力してもらえる範囲に限りがあり、あれもこれも、根掘り葉掘り、なんでもかんでも調査することはできません。
アンケートの限界は以上の三つです。
アンケートを実施する際はこの限界をよく理解し、また前回のブログでご紹介したコミュニケーションの特殊性も理解したうえで、用法・用量を守って正しく扱う必要があるわけです。
最後に。記事の冒頭で仕事をするうえで意識しているキーワードを勝手にご紹介した流れを踏まえて、アンケート実施におけるキーワードを考えてみたいと思います。
それは、
「感謝」と「恩返し」
だと思います。(某ドラマから強烈な影響を受けています。)
前回でもお示した通り、アンケートは回答者の自発的な協力と忍耐があって初めて成立する、相手に答えて「いただく」コミュニケーションです。
回答者の協力と忍耐に圧倒的感謝し、回答者が答えやすいようあらゆる工夫をすべきです。
ただ、相手に答えていただいたアンケートのデータを集計・分析した結果、な~んにもわからなかった場合、そのアンケートはすべて無駄になります。もちろんせっかくの回答者の協力と忍耐の気持ちも無駄にすることになります。
そして何もわからなかったということは、次のアクションを起こせないということです。つまりはアンケートに答えてくれた回答者に恩返しができないということです。
この不毛な流れはとりあえずアンケートやってみたパターンや回答者のことを考えていないパターンの時におきがちです。
こんな風に回答者の気持ちを踏みにじってかつ時間も無駄にしないために、
アンケートをやる前から「何を知りたいのか」を明確にして、そのために「何を質問するか」と「どう分析するか」を明確にしてから、アンケートを実施するとよいと思います。
前者は専門用語で「リサーチクエスチョン」といい、そして後者はそのクエスチョンの仮の答えである仮説を検証するためのデータと手段ですね。
リサーチクエスチョンと仮説検証の手段を明確にして、回答者に圧倒的感謝のもとありとあらゆる配慮がされたアンケートを実施し、分析してくことで、アンケートの最終的な目標とも言える恩返しができると思います。
■参考文献
鈴木淳子(2016)「質問紙デザインの技法」, ナカニシヤ出版.
【見えないモノを見ようとしがちな大学職員】