グレーゾーン学生、日常生活に困難さを抱える学生への支援について
管理人Iです。今回は障害学生への支援を考える第3弾です。1回目は合理的配慮提供義務付けについて、2回目は合理的配慮の検討方法について投稿しました。
今回はグレーゾーン学生や日常のちょっとしたことに困難さを抱える学生への支援方法についてご紹介をしたいと思います。
※ここで言うグレーゾーン学生とは発達障害の診断は出ていないが、発達障害の傾向があり、日常の学生生活にちょっとした困難さを抱える学生のことを指します。適切な表現ではないかもしれませんが、便宜上このように表記いたします※
【今回のポイント】
・発達障害傾向の学生への支援はスモールステップで!
・発達障害傾向学生への支援は日常の仕事やコミュニケーションにも使えるよ!
発達障害傾向にある学生は下記のような傾向を持っていることがあります。
・話を聞く・理解することが苦手
-話を聞きながら、同時にメモが取れない
-教員からの指示の取り違えや聞き逃しが多い
-曖昧な指示が理解できない
・タスク・スケジュール管理が苦手
-複数のレポート課題が出た時に手際よくこなせない
-やることの期日を忘れる・間違える
-決められた実験の手順を度々忘れる
・他者と会話をすることが苦手
-会話のやり取りにパターンが少ない
-自分から他の学生や教職員に話しかけられない
-質問されたときに固まったり、答えることができない
こうした学生への配慮や支援に関して、下記のような支援が有効だと言われています。
・話を聞く・理解することが苦手
-学生がメモする時間を十分に与える
-指示するときは5W1Hを明確にする
-1回あたりの指示の長さを短くする
-録音機器を使って指示内容を聞き直せるようにする
・タスク・スケジュール管理が苦手
-タスクやスケジュールを「見える化」する
-やるべきタスクをより細かくする
-進行中・完了したタスクをチェックする
-やるべきことの〆切を決めて学生に伝える
-「できなかった時」のことを確認しておく
・他者と会話をすることが苦手
-会話のパターンを増やす
-事前に想定される会話や質問を書き出しておく
-話しかけるときの「クッション言葉」を用意する
・「今、ちょっといいですか」「差し支えなければ」
・「お手数ですが」「お時間はありますか」
-会話の状況を思い出せるかを確認する
-思い出せない時は改めて伝える
いかがでしょうか。障害学生への支援でなくても、普段の人とのコミュニケーションのなかで活用できそうですよね。
こうした支援に関連して「スモールステップ」で適切な行動で導いていくことも大切です。ものごとにはできるようになるためのステップがあるので、それを一つ一つ達成していくという考え方です。
・できるようになるためのステップ
-今できているステップはどこか
-次のステップはどこか?
-ステップを飛ばそうとしていないか?
・やるべきことを細分化する
-「レポートを書く」というタスクの場合
①資料を集める ②資料を読む ③パソコンを開く ④見出しを書く ⑤考えたことを書き出す ⑥見直す ⑦印刷して期日までに提出 という形です。これを一つずつ完了させていくことを目指します。
そして適切な行動ができる環境づくりも大切です。
・視覚的に提示する
-口頭で伝えることを視覚的にも示す(逆も)
-写真を挿入したり、流れ図を示す
・活動に興味を持てるようにする
-参加してほしいイベントでは魅力を記載する
・ルールを前もって説明する
-注意点や留意事項は前もって説明する
・構造化する
-書類など前もってミスが少なくなるように書式を見直しておく
いかがでしょうか。皆さんの身の回りにある申請書などの書式は誰にでも分かりやすいものか確認してみてください。
今回ご紹介したものは発達障害学生への支援だけではなく、普段の仕事やコミュニケーションに活用できますのでぜひ実践してみてください。
<参考>
http://www.ja-shizuoka.or.jp/k-honsyo/step/step479.html
【管理人:I】
合理的配慮の考え方について
管理人Iです。
二週間前の投稿では障害学生への合理的配慮が私立大学でも義務付けられたこと、そして合理的配慮は同規模大学が実施しているものと同水準のものを提供しなければならないことをお伝えしました。
daigakushokuin2020.hatenablog.com
今回は「合理的配慮の考え方」について書いていこうと思います。よろしくお願いします。
今回、覚えて頂きたいことはこちら。
・3ポリシーで教育の本質を明確化することで、合理的配慮の内容が決めやすくなるよ! ということです
基本的に障害者手帳を根拠資料とし合理的配慮が提供されますが、大学等では医師の診断書がなくても障害の傾向があるという場合でも合理的配慮を受ける学生が一定数存在するというデータもJASSOの調査ではあるようです。とはいえ、学生の生活上の困難さはそれぞれ違いますし、所属する学部で展開されている教育によってどんな配慮が望ましいかはそれぞれ異なりますので、配慮の内容は各大学がケースごとに検討をしていく必要があります。
では大学における合理的配慮の提供において、その内容を検討する上で大切な点について触れたいと思います。大学おいては3ポリシー(AP、CP、DP)により教育の本質を明確化することで、合理的配慮の提供によって変更可能な点と変更できない点を明確化することができます。
例えば、
・「素早く回答できること」を評価することが教育の本質とする場合→試験における時間延長は認められない
・「速さではなく回答の質」を評価することが教育の本質とする場合→試験における時間延長は認められる
といった具合です。
そのため教育の本質と目指す能力水準の作成において「〜ができる」までが具体化されていると合理的配慮の内容も検討しやすくなるということです。
合理的配慮はあくまで学生が修学を継続するための教育環境の変更・調整を行うものであり、成績評価基準を変えるということではないということになります(成績評価方法の変更や調整は必要になる場合があります)。
合理的配慮の提供と並行して学生の能力向上を行なっていくことも学生の為に必要なこととなっています。例えば発達障害の学生が苦手とする時間の管理方法やレポート作成の手順などは工夫をしながら学生と一緒にトレーニングをしていくことが望ましいです。学生の能力向上に向けた工夫については今後の投稿で書きます。
少し古いですが、日本学生支援機構(JASSO)が発行した、「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」をご案内しておきます。
各事例に対しての具体的な配慮内容がまとめられている冊子です。
【考察】
この様に3ポリシーに基づいて配慮内容を決めていけば大学としてもその配慮内容にブレが出てこなくなり一貫性のあるものになります。そうして内容が精査されていくことで大学の負担も軽減できるかもしれません。中小規模大学は社会福祉士のような専門職の配置も難しいことが多いので少しでも効率の良い支援を目指したいですね。あとは具体的な支援にTAなどにも協力してもらい、学生による相互支援も図っていきたいところです。持続可能な支援を展開していくことはSDGsの考え方にも沿っていることになりますね。
【管理人:I】
業務の構造を変革するツール紹介:Microsoft Power Automate
管理人Oです。
今回は、大学のDX推進ワーキンググループの一員としての体験をもとに、個人的に未来を感じたツールを紹介いたします。
昨今、国内の様々な大学においてDX推進が経営のキーワードとなり、各大学で多くの取組みがなされていることと思います。
この時代の潮流の中で、DX推進が重要であることは分かるけど果たして具体的に何をすればいいのか、と現場で困惑しているというところもあるのではないでしょうか。
本記事は、数ある大学の中でも、Microsoft 365のライセンスを持っており、かつ、現場の職員によるトライアル&エラーでDXの実現を試みている大学の職員方に、参考としていただければ幸いです。
Microsoft 365のライセンス
まず、私管理人Oは地方の国立大学に勤めています。本学ではMicrosoft 365の包括的ライセンスを契約しており、学生・教職員はそれぞれMicrosoft 365のアカウントを所持しています。
これによって、例えばアンケートツールであるMitrosoft Formsでアンケートを実施する際に、大学内部のアカウントを所有する回答者のIDを自動で判別・記録する設定を行えるなど、各個別アカウントと紐づけた動作を設定することが可能です。
Microsoft 365で利用できるアプリケーションは契約するライセンスの内容で変わりますが、本学ではWord・Excel・PowerPoint・Outlookのような基本的なアプリケーションに加え、チャットやビデオ通話機能を持つTeams、クラウドストレージであるOneDriveなど、オンライン環境を活用する共同作業に向くアプリケーションを使えるようになっています。
Power Automateの特徴
本学で利用可能なアプリケーションの中には、各種Microsoft 365アプリケーションを連携させて自動処理を行うよう設定ができるアプリケーションが存在します。
それが、今回紹介するPower Automateです。
Power Automateでは、特定の動作に対して自動でアプリケーションの処理を実施する設定を行うことができます。
こう聞くとプログラミングのようなイメージが湧くかと思いますが、設定する際にユーザーがすることは、「トリガー」と呼ばれる、処理を開始するための特定のイベントを表示される一覧から選択し、処理させたい各種アプリケーションの動作を追加していくことで、簡単にアプリケーションを連携した自動処理を設定できます。
例えば、「トリガー」としてFormsで新たな回答が送信されるというイベントを選択し、Teamsでの承認機能を起動させるという処理を設定することで簡単な電子申請の枠組みを作成でき、ユーザーはコードを書くことなく、視覚的にこれらの設定を組み合わせられます。(参照:Forms,Teams,PowerAutomateを使用して申請フローを作る – Cloud Steady | パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)
上述のとおりPower Automateによって各種アプリケーションを連携した自動処理が可能となり、本学でのDX推進の取組みの一つとして、今まで紙の申請書提出が必要だった各種申請手続きを、クラウド上で処理できるよう業務の流れを再構築しています。
中でも、試行錯誤のうえ学生の駐車許可申請を自動処理する設定が完成し、今後数か月のトライアルを通して動作を確認して本格運用するなど、電子申請への移行が進みつつあります。
このような自動処理設定を担当して、Power Automateのようなアプリケーションを活用することで、業務の構造そのものを変えることができるという実感が湧きました。
今までは、窓口が開いている平日8:30~17:15に授業の合間を縫って申請をしないといけなかったものが、電子申請処理を可能とすることで、学生は時間・場所を選ばず自身のスマホ・PCから申請することができるようになります。
また、恩恵を受けるのは学生のみではなく、窓口を担当する職員にも大きなメリットがあります。
本学では年度毎に駐車許可を管理しており、学生からは毎年度約900件の申請を受け付けており、4月のオリエンテーション期間中には1日100枚超の申請書を窓口で受け取ることもあります。
今までは職員が1枚1枚申請書を窓口で確認し、駐車許可管理システムに手入力していたのですが、自動処理設定を行うことで、担当者に届く通知で許可・不許可の応答をするだけで、学生への申請結果通知を含めて処理が完了するため、作業時間の大幅な削減が見込まれます。
さらに、Microsoft 365が使える環境であれば処理可能なため、職員に支給されている事務端末のほか自身のPC等で業務を遂行できるようになり、将来的には担当職員も場所を選ばず仕事ができる環境が整う可能性を秘めていると感じました。
今後も、DX推進ワーキンググループのメンバーとして様々な体験をすることになりますので、活動の中で少しでも役に立ちそうな情報があれば投稿いたします。
【管理人O】
障害学生の支援に関する変化について
管理人Iです。1週間空いての投稿となりました。申し訳ございません。
本日は障害学生の支援に関わる状況の変化について投稿したいと思います。
今回は覚えて頂きたいことを先に書いてみようと思います。
1. 法改正で障害ある学生への合理的配慮が私立大学も義務付けられたよ!
2. 学生本人から意思の表明があり、「負担が過重でない」時は合理的配慮を提供しなければならないよ!
この2点だけ知っていただければ幸いです。
今年5月28日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が改正されました。今回の改正では民間事業所も合理的配慮の提供が義務化されました。これまでは国公立大学のみ合理的配慮が義務付けられていましたが、私立大学にも合理的配慮が義務付けられることになりました。
(祝)「障害者差別解消法改正法成立!」~民間事業者も合理的配慮の提供義務化へ~ | DPI 日本会議
合理的配慮に関しては学生本人からの「●●をしてほしい」という意思の表明があり、「負担が過重でない」ときは合理的配慮を提供しなければならないことになります。この「負担が過重でない」の考え方に関しては下記の要件等を含めて、総合的・客観的に検討して判断をすることが前提になります。
1. 教育及び研究、その他大学が行う活動への影響(その目的・内容・機能を損なうか否か)
2. 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
3. 費用・負担の程度
4. 大学の事務・事業規模、財政・財務状況
そして合理的配慮の提供にあたってはすでに同種・同規模の大学で配慮している場合は同様に配慮すべきであるとされているようです。
中小規模大学ですと障害学生の支援を行おうにも人員や校舎などのハード面の整備など体制が十分に整えられない状況がありますので、非常に悩ましい問題だと思いますが、今後努力しないといけない状況になりました。
考え方として、コストとのバランスを検討し、授業の内容に応じて優先順位をつけて対応を検討していくことが求められます。
次回は合理的配慮の考え方について書いていきたいと思います。
【管理人:I】
「社会人基礎力」の測定尺度について
管理人Oです。
前回の私の投稿から続く形で、今回も「社会人基礎力」に関する内容を投稿させていただきます。(参照:「人生100年時代の社会人基礎力」について - 大学職員の生活改善ねた)
今回は、社会から求められる能力として示される「社会人基礎力」の習得に着目して、大学において学生の学習効果を測定する尺度を、日本国内の大学教職員方によって発表された研究等の情報に基づいて紹介いたします。
4領域15項目からなる測定尺度の改訂版(西道,2011)
西道(2011)の試みに、「社会人基礎力」の概念的定義をもとに測定すべき指標を整理した結果策定された「4領域15項目からなる測定尺度」を、クラス単位で効果測定を行うことを目的としたものから、個人単位で測定するための尺度に改定する試みがあります。
当初の「4領域15能力からなる測定尺度」では、以下のとおり4つの領域に関する項目として15項目が挙げられています。
前に踏み出す力
- 主体性
- 働きかけ力
- 実行力
考え抜く力
- 課題発見力
- 計画力
- 創造力
- 情報収集力
伝える力
- 発信力
- 説得力
- プレゼンテーション力
チームで働く力
- 傾聴力
- 柔軟性
- 状況把握力
- 規律性
- 職業理解力
引用 (西道,2011)
これらの測定項目に、項目数を3倍とすることを目的に修正・追加が行われ、最終的には次のとおり45項目が設定されることとなりました。
主体性
- 指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む力
- 自分の果たすべき役割と責任を自覚し、積極的に取り組む力
- 自分の個性や興味・関心にもとづいて、目の前の課題に取り組む力
柔軟性
実行力
- 自ら目標を設定し、粘り強く行動する力
- 提案するだけでなく、自らの目の前の対象を動かす力
- 失敗をおそれず、行動に移す力
情報収集力
- 自分に必要な情報を得るために、あらゆるメディアを活用する力
- 自分に必要な情報や資料を的確に探し出す力
- 得られた情報を、多面的・多角的に整理する力
プレゼンテーション力
- 限られた時間の中で、情報や主張を、わかりやすく聞き手に伝える力
- 調べたことを伝える際に、効果的な手段やメディアを用いる力
- 情報を伝えるために、必要な創意工夫を加える力
職業理解力
- 学んだことや体験したことを、職業や生活とつなげて考える力
- 日々の体験を通して、社会の規範やマナーを理解する力
- 周りの人たちの仕事から、働く意義や大切さを理解する力
創造力
- 既存の発想にとらわれず、解決方法を工夫して考える力
- 未知の分野にまで思考を広げることで、新しい解決方法を導き出す力
- あらゆる可能性を再検討することで、解決方法を再発見する力
説得力
- 自分の言いたいことを、わかりやすく、効果的に伝える力
- 自分の話に信頼感をもってもらえるように話せる力
- 相手の立場に配慮しながら、自分の主張を伝える力
働きかけ力
- 目標を達成するために周りの人に呼びかけて、周囲の人を動かす力
- 人を巻き込んで提案する力
- 立場や意見の異なる人に働きかけて、動かす力
傾聴力
- 話しやすい雰囲気をつくって、相手の意見を引き出す力
- 相手の言動を観察し、意見や主張を正確に聞き取る力
- 自分が分からないことを聞き流さずに、相手に質問して確認する力
発信力
- 自分の考えをわかりやすく整理して、相手に理解してもらえるように伝える力
- 相手にとって良くないことでも、自分の意見を確実に伝える力
- 仲間内にしか伝わらないような言葉で話したりせず、誰もが理解できるように話す力
状況把握力
- グループの中で自分がどんな役割をすればよいのかを理解する力
- お互いの個性や能力を理解し、それが発揮できるような関係を築く力
- 周囲の人々や物事との関係を理解するために積極的に働きかける力
課題発見力
- 目標を達成するために解決すべき問題を見つける力
- 見過ごされがちな問題を発見する力
- 正解不正解が曖昧な問題の解決策を見いだす力
計画力
- 目標を達成するための手順や方法について優先順位を決定する力
- 将来設計に基づいて、今取り組むべき学習や活動を理解して準備する力
- 課題を解決する複数のプロセスを明確にし、最善のプランを立案する力
規律性
- 集団や社会生活の規則やルールを守って適切に行動する力
- 状況に応じて、自らの発言や行動を適切に律する力
- 他者と共有する「空気」を読んで、自分の行動を修正できる力
引用 (西道,2011)
上述の45項目を利用して4つの領域「前に踏み出す力」「考え抜く力」「伝える力」「チームで働く力」に関連する項目を主因子法を用いて分析した結果、「4領域15項目からなる測定尺度」は、最終的に40項目で表されるよう改定されました。
その内容を引用すると、次のとおり各領域と項目が信頼のある測定尺度として結論付けられています。
前に踏み出す力(因子得点順)
- 提案するだけでなく、自ら目の前の対象を動かす力
- 指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む力
- 目標を達成するために周りの人に呼びかけて、周囲の人を動かす力
- 人を巻き込んで提案する力
- 立場や意見の異なる人に働きかけて、動かす力
- 自分の果たすべき役割と責任を自覚し、積極的に取り組む力
- 失敗をおそれず、行動に移す力
- 自分の個性や興味・関心にもとづいて、目の前の課題に取り組む力
考え抜く力(因子得点順)
- 課題を解決する複数のプロセスを明確にし、最善のプランを立案する力
- あらゆる可能性を再検討することで、解決方法を再発見する力
- 既存の発想にとらわれず、解決方法を工夫して考える力
- 未知の分野にまで思考を広げることで、新しい解決方法を導き出す力
- 正解不正解が曖昧な問題の解決策を見いだす力
- 目標を達成するために解決すべき問題を見つける力
- 目標を達成するための手順や方法について優先順位を決定する力
- 得られた情報を、多面的・多角的に整理する力
- 将来設計に基づいて、今取り組むべき学習や活動を理解して準備する力
- 見過ごされがちな問題を発見する力
- 自分に必要な情報や資料を的確に探し出す力
伝える力(因子得点順)
- 自分の言いたいことを、わかりやすく、効果的に伝える力
- 限られた時間の中で、情報や主張を、わかりやすく聞き手に伝える力
- 自分の考えをわかりやすく整理して、相手に理解してもらえるように伝える力
- 自分の話に信頼感をもってもられえるように話せる力
- 仲間うちにしか伝わらないような言葉で話したりせず、誰もが理解できるように話す力
- 情報を伝えるために、必要な創意工夫を加える力
- 相手の立場に配慮しながら、自分の主張を伝える力
- 調べたことを伝える際に、効果的な手段やメディアを用いる力
- 相手にとって良くないことでも、自分の意見を誠実に伝える力
チームで働く力(因子得点順)
- お互いの個性や能力を理解して、それが発揮できるような関係を築く力
- グループの中で、自分がどんな役割を担えばよいのかを理解する力
- 状況に応じて、自らの発言や行動を適切に律する力
- 他者と共有する「空気」を読んで、自分の行動を修正できる力
- 相手の言動を観察し、意見や主張を正確に聞き取る力
- 話しやすい雰囲気をつくって、相手の意見を引き出す力
- 固定観念にとらわれないで、相手の立場や意見を理解する力
- 周りの人たちの仕事から、働く意義や大切さを理解する力
- 周囲の人々や物事との関係を理解するために積極的に働きかける力
- 学んだことや体験したことを、職業や生活とつなげて考える力
- 既存のやり方やマニュアルにとらわれない考えを受け入れる力
- 自分が分からないことを聞き流さずに、相手に質問して確認する力
引用 (西道,2011)
所感
40項目の測定尺度を活用し、例えば、企業へのインターンシップや、地域社会での課題解決型学習プログラムへの参加前後での習得度合いの変化を測定することで、学生が「社会人基礎力」を身につけられたか客観的に測ることができると期待できますし、実際に活用されているようです。
大学においても「社会人基礎力」養成が求められていることを考慮すれば、単純に学問に関する知識習得の度合いを測ることに加え、西道(2011)が示したような測定尺度を用いて、大学のカリキュラムを通して、学生が「社会人基礎力」を十分に学ぶことができているか、また、社会が求める人材が輩出されているか検証することは、大学が社会に貢献するうえで必要なことのように考えられました。
引き続き、高等教育に携わるということを、さらに広い視野で考えられるよう情報を収集し、私なりに嚙み砕いて発信していきます。今回も投稿をお読みいただきありがとうございました。
参考文献
西道実(2011). 社会人基礎力の測定に関する尺度構成の試み プール学院大学研究紀要. 51. 217-228.
【管理人O】
ぶれない目標を持つということ
管理人Iです。
大学で仕事をしていくなかで、皆さんは組織の「一体感」を感じておられるでしょうか。私はどうにも自大学において組織の一体感を感じられない時があります。
大学という場所は教員と職員の関係性、様々な学部、多彩な部署で構成されていること、教育と研究、地域貢献、そして営利という様々な目的をもって事業が運営されていることからそれぞれの利害が時には一致しないことはしばしばあり、それが一体感を感じにくい原因と言えると思います。大学には建学の理念、使命、教育理念がそれぞれありますが、それを自身の仕事の改善に生かしていけるようなより分かりやすい組織の目標、ビジョンを示すことが必要だと感じています。民間企業だと「業界内シェアNo.1」「歴代最高益」といった非常に分かりやすい指標にすることができますね。
Panasonicを一代で築き上げた「経営の神様」と言われている松下幸之助はこう言っています。
「経営者としての大きな任務の1つは、社員に夢を持たせるというか、目標を示すことであり、それができないのであれば経営者として失格である」
社員は目標を持つと、あれこれと工夫し達成しようと努力します。また、ときに皆で協力し合うことも出てきます。こうした育みを続けることが大きな成果を生み、人の成長にも繋がると語っているのです。
皆さんの大学では理事長、あるいは学長が自らの口で目標を語られておられるでしょうか。そしてその目標に皆さんは共感ができているでしょうか。どれだけ高尚な目標が掲げられていても共感ができていれば行動に移すことができないからです。理想を高く持ちながらも共感し実践できるものにする。それが経営者の腕の見せ所です。
同じ目標に向かって突き進める組織は、意思決定のスピードが速かったり、それぞれが創意工夫を凝らしながら仕事を進めることができます。また、その目標にどれだけ貢献できるか、組織内で競争も生まれるでしょう。どれだけ優秀な人材がいても目指す方向が違っていれば組織内でいい仕事をし、貢献することができません。経営者が掲げる目標というのは組織を導く上で非常に重要なものなのです。いま、勢いのある大学ではそれができているのではないでしょうか。
自分が経営者の立場でなくても、近い将来、部署の管理者になったときには目標を掲げ、それに向けてチーム一丸となり前に進んでいける組織を作っていきたいと思いました。
<参考>
【管理人:I】
「人生100年時代の社会人基礎力」について
管理人Oです。
6月も3週目に突入し、大学によっては、学生・教職員の皆さんも学期末試験に向けて本腰を入れようかというところもあるのではないでしょうか。
今回投稿の記事は、試験はもちろんのこと、普段の学習に関係する内容について紹介いたします。
海外留学の学習効果測定方法を調べている中で改めて知ることとなった「人生100年時代の社会人基礎力」について触れ、私の次の投稿に繋げる形で、所感を共有させていただきます。
「人生100年時代の社会人基礎力」とは?
「人生100年時代」というフレーズを、ここ数年で皆さんも聞くことが多くなったのではないでしょうか。
このフレーズは、東洋経済新報社から2016年に発行された『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(Lynda Gratton・Andrew Scott著)で提唱された、長寿化の進行によりもたらされる変化を表しており、また、厚生労働省の下に設置された人生100年時代構想会議においても、生涯学習の重要性を説くうえでキーフレーズとなっています(参照:「人生100年時代」に向けて|厚生労働省)。
では、「人生100年時代」のように長寿化の進んだ時代では、どのような能力が求められるのでしょうか。
そう、求められる能力こそが「人生100年時代の社会人基礎力」なのです。
「人生100年時代の社会人基礎力」は、経済産業省により定義された能力で、3つの能力/12の能力要素を基本に、3つの視点をかけあわすことで能力を発揮するという、自身のキャリアを切り開くために重要な能力と捉えられています(参照:社会人基礎力(METI/経済産業省))。
以下、この能力を具体的に見ていきましょう。
3つの能力/12の能力要素
経済産業省が2006年に提唱した「社会人基礎力」は、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力と計12の能力要素から成るもので、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として定義されています。
経済産業省の説明資料には、3つの能力/12の能力要素について、それぞれ次のように説明されています。
『前に踏み出す力(Action)』~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~
●主体性:物事に進んで取り組む力
●働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
●実行力:目的を設定し確実に行動する力
指示待ちにならず、一人称で物事をとらえ、自ら行動できるようになることが求められている。
『考え抜く力(Thinking)』~疑問を持ち、考え抜く力~
●課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
●計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
●創造力:新しい価値を生み出す力
論理的に答えを出すこと以上に、自ら課題提起し、解決のためのシナリオを描く、自律的な思考力が求められている。
『チームで働く力(Teamwork)』~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~
●発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
●傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
●柔軟性:意見の違いや相手の立場を理解する力
●状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
●規律性:社会のルールや人との約束を守る力
●ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
グループ内の協調性だけに留まらず、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められている。
出典元:経済産業省
3つの視点
上述の「社会人基礎力」に加えて、「人生100年時代」においては能力を発揮するにあたり、自己を認識したうえで振り返りながら、「3つの視点」のバランスを図ることが求められます。
経済産業省の説明によると、「3つの視点」は次のとおり定義されています。
どう活躍するか【目的】
自己実現や社会貢献に向けて行動する
何を学ぶか【学び】
学び続けることを学ぶ
どのように学ぶか【統合】
多様な体験・経験、能力、キャリアを組み合わせ、統合する
出典元:経済産業省
「人生100年時代の社会人基礎力」についての考え方をまとめると、今まで以上に長くなる個人の人生を充実させるために、ライフステージの各段階で、自身の経験を振り返りながら、「目的」、「学び」、「統合」を意識して、成長するうえで大事な「前に踏み出す力」、「考え抜く力」および「チームで働く力」を養うことが重要視される時代に突入している、と言えるでしょう。
所感
今回は、社会人基礎力の概要について簡単に触れました。
私自身、個人が成長するためには常に自分の知識・スキルは当然のことながら、考え方も含めてアップデートし続けなければならない、と漠然と思っていたのですが、改めて「人生100年時代の社会人基礎力」として言語化された指標を見て、より具体的に、社会で必要とされる能力・能力要素を把握できました。
実は経済産業省の説明資料には、個人の「人生100年時代の社会人基礎力」を育成する担い手として大学を含む高等教育機関が挙がっており、大学等においては、専門知識を更新すること、汎用的スキルを習得すること、そして、理論的な理解を深めることができる場であることが求められています。
大学進学者にとって、個人の経験を反映しつつ、大学での教育を経て3つの能力/12の能力要素を発達させることができるよう環境を整えることが、私たち教職員の業務の根幹部分にあたるのかもしれない、と感じた次第です。
私の次の投稿では、この内容を踏まえて、実際に大学で活用されている学習効果測定方法についてまとめてみたいと思います。
管理人O