「人生100年時代の社会人基礎力」について
管理人Oです。
6月も3週目に突入し、大学によっては、学生・教職員の皆さんも学期末試験に向けて本腰を入れようかというところもあるのではないでしょうか。
今回投稿の記事は、試験はもちろんのこと、普段の学習に関係する内容について紹介いたします。
海外留学の学習効果測定方法を調べている中で改めて知ることとなった「人生100年時代の社会人基礎力」について触れ、私の次の投稿に繋げる形で、所感を共有させていただきます。
「人生100年時代の社会人基礎力」とは?
「人生100年時代」というフレーズを、ここ数年で皆さんも聞くことが多くなったのではないでしょうか。
このフレーズは、東洋経済新報社から2016年に発行された『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(Lynda Gratton・Andrew Scott著)で提唱された、長寿化の進行によりもたらされる変化を表しており、また、厚生労働省の下に設置された人生100年時代構想会議においても、生涯学習の重要性を説くうえでキーフレーズとなっています(参照:「人生100年時代」に向けて|厚生労働省)。
では、「人生100年時代」のように長寿化の進んだ時代では、どのような能力が求められるのでしょうか。
そう、求められる能力こそが「人生100年時代の社会人基礎力」なのです。
「人生100年時代の社会人基礎力」は、経済産業省により定義された能力で、3つの能力/12の能力要素を基本に、3つの視点をかけあわすことで能力を発揮するという、自身のキャリアを切り開くために重要な能力と捉えられています(参照:社会人基礎力(METI/経済産業省))。
以下、この能力を具体的に見ていきましょう。
3つの能力/12の能力要素
経済産業省が2006年に提唱した「社会人基礎力」は、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力と計12の能力要素から成るもので、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として定義されています。
経済産業省の説明資料には、3つの能力/12の能力要素について、それぞれ次のように説明されています。
『前に踏み出す力(Action)』~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~
●主体性:物事に進んで取り組む力
●働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
●実行力:目的を設定し確実に行動する力
指示待ちにならず、一人称で物事をとらえ、自ら行動できるようになることが求められている。
『考え抜く力(Thinking)』~疑問を持ち、考え抜く力~
●課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
●計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
●創造力:新しい価値を生み出す力
論理的に答えを出すこと以上に、自ら課題提起し、解決のためのシナリオを描く、自律的な思考力が求められている。
『チームで働く力(Teamwork)』~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~
●発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
●傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
●柔軟性:意見の違いや相手の立場を理解する力
●状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
●規律性:社会のルールや人との約束を守る力
●ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
グループ内の協調性だけに留まらず、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められている。
出典元:経済産業省
3つの視点
上述の「社会人基礎力」に加えて、「人生100年時代」においては能力を発揮するにあたり、自己を認識したうえで振り返りながら、「3つの視点」のバランスを図ることが求められます。
経済産業省の説明によると、「3つの視点」は次のとおり定義されています。
どう活躍するか【目的】
自己実現や社会貢献に向けて行動する
何を学ぶか【学び】
学び続けることを学ぶ
どのように学ぶか【統合】
多様な体験・経験、能力、キャリアを組み合わせ、統合する
出典元:経済産業省
「人生100年時代の社会人基礎力」についての考え方をまとめると、今まで以上に長くなる個人の人生を充実させるために、ライフステージの各段階で、自身の経験を振り返りながら、「目的」、「学び」、「統合」を意識して、成長するうえで大事な「前に踏み出す力」、「考え抜く力」および「チームで働く力」を養うことが重要視される時代に突入している、と言えるでしょう。
所感
今回は、社会人基礎力の概要について簡単に触れました。
私自身、個人が成長するためには常に自分の知識・スキルは当然のことながら、考え方も含めてアップデートし続けなければならない、と漠然と思っていたのですが、改めて「人生100年時代の社会人基礎力」として言語化された指標を見て、より具体的に、社会で必要とされる能力・能力要素を把握できました。
実は経済産業省の説明資料には、個人の「人生100年時代の社会人基礎力」を育成する担い手として大学を含む高等教育機関が挙がっており、大学等においては、専門知識を更新すること、汎用的スキルを習得すること、そして、理論的な理解を深めることができる場であることが求められています。
大学進学者にとって、個人の経験を反映しつつ、大学での教育を経て3つの能力/12の能力要素を発達させることができるよう環境を整えることが、私たち教職員の業務の根幹部分にあたるのかもしれない、と感じた次第です。
私の次の投稿では、この内容を踏まえて、実際に大学で活用されている学習効果測定方法についてまとめてみたいと思います。
管理人O