大学職員の生活改善ねた

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定量データから仮説を立てる際のポイント

 

 中堅職員のYです。今回は、「仮説」とは何か?「仮説」を立てる際の留意点等について考察してみたいと思います。特に、データを数値化して捉えた「定量データ」から意味ある「仮説」を立てるため心構えについてお伝えします。

(1)仮説を立てる前の準備

 定量データを入手したら下ごしらえをすることが大切です。

①仮説を立てるために必要なデータを押さえる

 仮説を立てる際に注意すべき点は、仮説に必要なデータだけを使うということである。良くある事例として、当初は必要と思っていないデータでも作業の中で何か言えそうな気がしてきてしまい、データを採用した結果、本来の目的とはズレた仮説となってしまう。加えて、必要のないデータに目を取られることで効率が低下する。そこで、どのデータを利用して仮説を立てるのかをしっかりと意識しておくことが必要。

②集約する

 定量データの最初の段階は数値の羅列。この状態から何が言えるかを考えるのは至難の業。データはまず仮説を立てやすいような形にまとめる必要があり、その最も一般的なものが「集計表」です。企業でいえば、売り上げを様々な観点から集約しておけば、他の企業のデータや時系列での変化等、他のデータとの比較も可能となります。その際、重要なポイントが2点。

(Ⅰ)MECE(ミーシー):もれなくダブりなく

 定量データを集約する際、MECEで切り分けてデータにモレやダブりを無くすことが重要である。データを集約する際に重要そうなデータだけを集めて、残りを使わなければ精度の高い仮説を立てることが出来ない。一方、ダブっている場合は、その部分が強調されることとなり、誤った仮説となってしまう可能性もある。

 あるデータについて考えられる要素を思いつくままにくりぬいていくと、モレやダブりのある分け方になってしまいがち。これに対して、“ある一つの観点”で切るように分けていくとモレやダブりが生じることが無くなる。この観点を「切り口」と呼び、MECEに切り分ける場合、どのような「切り口」で切り分けるのかをはっきりさせることが重要です。心がけたい点としては、どの時点で切り分けるのが良いかというような、切り口の正解探しをすることではなく、様々な観点で集約し、様々な角度でデータを見る柔軟性を持つことです。

(Ⅱ)因数分解

 定量データをMECEに切り分ける基本は、いわばこれを足し算的に分けるものである。足し算以外にも、引き算や掛け算、割り算を活用して定量データを切り分けることができる。

③指標化する

定量データを集約してもすぐに比較が出来ない状態も多くある。そこで、比較出来るように指標化(複雑な現象の特徴を極めて単純な表現や数値で示すこと)することもある。パーセンテージ等の計算が挙げられる。その際、指標化の意味を理解しておくことが重要。また、意味のない指標に振り回されることなく地に足のついたデータの使い方を心掛けることも重要といえます。

 

(2)意味を読み取るために比較する

定量データは比較して意味を持つ

 データが一つでは分析できません。定量データを分析するためには比較対象となるデータが必要です。代表的な比較の形態として、時系列での比較・自分なりに設定した基準との比較・外部の比較対象との比較があります。

(Ⅰ)時系列で比較する

 時系列での比較では、同じ対象項目の異なる時点でのデータを比較対象とします。前年比、前年同月比などがその典型例です。この基準は、長期間で推移をみれば大きな傾向が見えるなど分析の基本といえます。なお、時系列での比較ではどれだけの期間の推移をみるかという点が重要です。なお、大きな環境変化があった場合には、それ以前のデータは意味が異なり、比較対象として適切ではない場合もあることから注意が必要です。

(Ⅱ)自分なりに設定した基準と比較する

 目標や計画は様々な裏付けをもとに決定することもありますが、最終的には自分が設定するものです。自分が設定した基準には比較対象としての柔軟性はありますが、客観的な理由がなくとも基準を決めることができるため、納得感が得られにくいこともあります。自分で設定した目標を比較対象とする場合、自らの問題意識に基づく比較が可能であるというメリットの反面、必ずしも突っ込んだ分析には役立たないということを念頭に置く必要があるといえます。

(Ⅲ)他の対象と比較する

 基準を客観的なものとするために外部の比較対象を活用する場合もあります。「ベンチマーク」という言葉が典型例です。この場合、比較対象の妥当性について注意する必要があります。

定量データを比較するときの注意点

(Ⅰ)目的に沿ったデータと比較する

 比較対象に何を選ぶかと同じくらい重要なことは比較しようとしているデータが目的に添ったものであるか注意することです。例えば、何らかのテスト結果が手元にあった場合、その結果だけを比較に使うのではなく、テストがどのような能力やスキルに関するものであるか検討する必要があります。
(Ⅱ)できるだけ同じ(近い)ものと比較する

比較する際には、比較する物と比較対象を出来るだけ同じものにしなければ意味ある比較にはなりません。

 

(3)意味を汲み取る

①数値自体に意味はない

 定量データで意味を汲み取ろうとする場合、数値に目が行きがちであるがそれは定量データの一部を文章で表現したのにすぎません。その数値を通して何が見えるか(言えるか)を読み取ることが重要です。

②軸から意味を読み取る

 数表で言えば縦軸や横軸に書かれている言葉の意味を読み取ることを念頭に置かなければなりません。

 

 次回の私の投稿の際には「定性的なデータ」から仮説を立てる際の心構えについて概説します。お楽しみに。

 

参考(引用)文献

生方正也(2015)「第2章 事実・データから仮説を立てる」『アウトプットの質を高める仮説検証力』,すばる舎,pp74-94.